ごあいさつ

アースサイエンスウィークはアメリカの地球科学研究機関AGI(American Geosciences Institute)により1998年に開始しました。それから学会交流を通じて、各国の地球科学研究者が中心となり、草の根活動的にそれぞれの国で本事業を展開しています。

過去半世紀以上にわたる地球科学の発展について考えたとき、プレートテクトニクス理論をはじめとする地球観の確立は、私たちの社会に非常に大きな価値観の転換をもたらしてきました。その成果は、地殻変動プロセスと地震・火山・津波のメカニズムの理解、 世界各地の多くの地形形成史、海洋・気象の役割、地球および宇宙空間との関係、そしてなにより、人類を含む生命体がどこから来たのかという根源的な問いに対しての統一的な科学的解釈がなされてきたことにあると言えるでしょう。 今年のノーベル物理学賞受賞が気候変動分野の研究者に決まったことからも、地球科学の重要性は益々高まっています。

アースサイエンスウィーク・ジャパンでは、上記のような地球科学の理念を伝えること意識しながら、今回、以下の点を重視した企画を取りまとめてきました。

1. 幅広い年代による参加

企画に参加する人々は、日本を代表する専門家、若き科学の才能、そして一般市民として自発的に行動することで社会において地球科学の価値を働きかけることを実践してきた人々です。特に、日本における地道な科学技術教育の取り組みである、科学オリンピックやスーパーサイエンスハイスクール(SSH)経験者たちも多く参加しています。この若い力は、これからの日本において科学技術開発の中核を担う大きな人材層となることが期待されます。

2. 多様な活動の紹介

今回、講演会を始め、野外実習、屋内実習、来場者とのコミュニケーションを可能にする展示およびデモンストレーションなど、それぞれの年齢、また、地球科学への関わり方に応じた企画を準備しました。
一方で、実験、実習には、講義形式と比較して、常に安全面のリスクがつきまといます。しかし、実際の自然に触れて学び、知ることを楽しむことが、地球そのものを理解する重要な方法であるいう理念のもと、担当者および事務局による事前の下見、計画作成、保険付保などのリスク対処を実施した上で募集を行います。
参加される皆様におかれましても、安全面には十分ご配慮いただきながら、無理なく自然の姿をありのままに見つめる機会を楽しみ、また、考えを深めていただければと思います。

3. 東日本大震災以降の地球科学研究

2011年3月11日に発生した東日本大震災以降の10年間、長い間経験していなかった自然災害も増加し、これらの研究も新たな段階に入りました。これらの研究成果の一端をお伝えします。
自然災害により失われた多くのものに向き合いながら、社会の未来を信じ、生活再建や若い世代の育成環境の維持に地道に取り組んできた人々の姿が、私の目にも焼きついています。なにより、被災された場所に生きる多くの人々が、親切に他者とのコミュニケーションを継続し、自然と折り合いをつけていく姿は、普遍的でありながら大事な価値観について改めて社会に認識させるきっかけとなっているように思います。
今回、東日本大震災の被災地である仙台において私たちの活動を行う機会を得たこと、何より、この活動の理念にご賛同くださり、会場提供始め共催機関として事業を推進して下さいましたスリーエム仙台市科学館に心より感謝申し上げます。

4. 新型コロナウイルス感染症対策

昨年からの新型コロナウイルス感染症への対策として、アースサイエンスウィーク・ジャパンでは、会場での換気、消毒、3密回避などの対策を講じながら、少しづつインターネットへの融合作業も行っています。今年の講演会は、会場での実開催とともにインターネット配信も実施します。 一方で、自然科学を含む科学技術は、実際の観察および機器類を用いた観察両方の利点を享受し続けてきた代表的分野でもあります。それぞれの利点、欠点に向き合いながら、新たな価値観をどのように創出していくことができるか、それが科学技術と社会の関係における課題でもあり、私たちも微力ながらも貢献することのできる部分であると考えています。

このホームページや会場を訪れた方々にとって、私どもの取り組みが、科学を通じて自然を理解することへの興味を持っていただくきっかけとなればこれほど嬉しいことはありません。 一方で、主催者としましては参加者の安全確保を最優先事項としています。会場を訪れる皆様におかれましても、安全にご配慮いただきながら、地球科学の期間を楽しんでいただけますよう、ご案内申し上げます。

最後に、今回の取り組みを実現するにあたり、様々な団体および多くの方々からご賛同、ご支援をいただきました。これらの方々へ厚く御礼申し上げます。

アースサイエンスウィーク・ジャパン実行委員会
委員長 小俣珠乃

海洋研究開発機構(JAMSTEC)技術主任/東北大学総合学術博物館講師(クロスアポイントメント)。日本地球惑星科学連合(JpGU)地球惑星総合科学代議員および教育検討委員会委員。 東北大学理学部地圏環境科学科卒。博士(理学、東北大学)。現在、JAMSTECでは内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的深海資源調査技術のプロジェクトに従事。東北大学総合学術博物館ホームページ「深海底の科学とプレートテクトニクスの発展」公開中。東日本大震災の経験を描いた絵本「津波の日の絆」を2019年に出版。